はじめに

あなたはグラフィックデザイナーの仕事を一生涯続けていける自信はありますか?

フリーランス、製作/事業会社所属などの分類はさておき、世の中には多くのグラフィックデザイナーがいらっしゃいます。
また、クラウドソーシングが普及する中でデザイナーを名乗る方も増えてきています。

しかし、デザイナーの数が増えているから業界の景気が良い、という訳ではなく、稼げるデザイナーと稼げないデザイナーに二極化しているのが事実です。稼げないデザイナーは日々の生活に困窮し、デザイナーとして働くことを諦めてしまう方もいます。

では、稼げるデザイナーと稼げないデザイナーの違いは何なのでしょうか?
実績や技術の違いもゼロではありませんが、クライアントへのヒアリングの質が稼ぎに直結しています。
稼げるデザイナーは揃いも揃ってヒアリング上手です。

ヒアリング技術を活用し、クライアントと良好な関係を築き、自分では捌ききれないほどの案件を獲得しているのです。

そこで今回は『グラフィックデザイナーとして生き残るために不可欠なヒアリングの技術』というテーマでお伝えします。

「高単価の案件が獲得できない、継続できない」、「稼げるデザイナーになりたいけど、どこから手をつければよいかわからない」とお悩みの方は、ぜひお読みください。

グラフィックデザイナーにとってのヒアリングとは?

まずは、ヒアリングという言葉の定義をご紹介します。

面接調査で、相手の話を聞くことを中心に情報収集する方法のこと

こちらは一般的な定義になりますので、グラフィックデザイナーのあなたは以下のように読み替えてください。

ヒアリングとは、「相手(クライアント、または見込み客)の話を聞くことを中心に(依頼内容の目的や相手の頭の中にあるデザインイメージを引き出しながら)情報収集する方法のこと」を言います。

ここでポイントとなってくるのは、「頭の中にあるデザインイメージを引き出す」という点です。

クライアントはデザインのプロではありませんし、同じ案件のことを四六時中考えている訳ではないため、制作物に対するデザインイメージが固まりきっていないことがほとんどです。そこで稼げるグラフィックデザイナーはヒアリングしながら、クライアントの頭の中を整理するお手伝いをしています。

ヒアリングの過程で新たな気付きや発見が生まれ、話をもっと引き出してもらいたいという欲求がクライアントの中で生まれます。

そして、この過程を繰り返していく中でクライアントからの信頼度が高まり、プロとして認められ、高額案件や継続案件の発注に繋がっているのです。

ヒアリングに向けての心構え

ヒアリングの重要性はご理解いただけたと思いますが、手順を解説する前に心構えをお伝えします。
どんなに優れたヒアリング技術を持っていたとしても、しっかりとした心構えを持てていなければ、良いヒアリングをすることは難しいからです。

(1) 前提を疑う

クライアントの要望を鵜呑みにせず、前提を疑いながら話を聞きましょう。

これはクライアントを信じるな、という意味ではありません。
実はデザイナーに仕事の依頼をしたものの、本当に欲しいものが何なのか、クライアントご自身がわかっていないことが多いです。

例えば、当初は売上アップのためにホームページのデザインをして欲しいと言われていたけど、話を聞いていく中でチラシやパンフレットなどの販促物のデザインを製作した方が売上アップに繋がる、というような感じです。
そのため、言われたことをそのまま製作するだけではクライアントの真の要望に応えられない可能性があります。

クライアントへの真の要望を明らかにしていくために施策の目的など、前提の確認からヒアリングを行いましょう。

(2) 慌てない

グラフィックデザイナーの実例

クライアントとのヒアリング中に沈黙が流れた際、気まずさを感じ慌ててしまう、何とか場を繋ごうとして焦ってしまう、こんな経験、あなたはお持ちですか?
この慌てる、焦るという行為、ヒアリングをうまく進めるためには避けたほうが良いNG行為です。

クライアントはあなたの質問に答えたくないのではなく、質問に答えるために脳を必死で働かせています。その結果、沈黙が流れているだけです。
相手が考えている時は答えを急かすのではなく、じっくりと待つ。これを徹底しましょう。

また、自分のアイデアや意見を提案したい場合も相手の話を遮るのではなく、話を聞き終わるまで待ち、その後に提案しましょう。

(3) わかったつもりのまま進めない

ヒアリングを進める中で専門用語などの知らない言葉が登場することがあります。

プロのグラフィックデザイナーとしてクライアントに接しているので、わからないと言うのは恥ずかしいという方がいらっしゃるかもしれません。
しかし、稼げるデザイナーは躊躇なく、言葉の意味をクライアントに質問します。
わからないものをわからないままに進めることのリスクを理解しているからです。

また、一般的な言葉でも業界や立場によって意味が違うことがあります。
そのため、少しでも疑問に思った言葉や重要な言葉は素通りさせるのではなく、必ず意味を確認してから話を進めていきましょう。

ヒアリングの手順とポイント

ここからはヒアリングの手順とポイントを解説していきます。
ヒアリングは、(1) 事前準備、(2) 本番、(3) 事後フォローの3ステップに大別できます。

(1) 事前準備

実はヒアリングの成否は事前準備の質が鍵を握っています。
ヒアリング本番で1から100まですべての情報をクライアントから聞き出すのではなく、事前準備の段階でできることはやり切っておく、これが成功の秘訣です。なぜなら、時間の制約からヒアリングを何度も行える訳ではないため、事前に把握できることと本番でしか把握できないことを切り分けておく必要があるからです。

では、どんなことをしておけば良いのでしょうか?
ざっくりお伝えすると、クライアントの商品/サービスや業界、または競合他社などのリサーチを行う必要があります。

なお、デザイナーのあなたが全てを調べる必要はなく、クライアントに質問を投げかける形で情報収集することができます。
ヒアリングシートという形でデザイナーが聞きたいことをまとめ、クライアントに送付するという形が取られることが多いです。

少なくとも以下のような情報は事前準備の段階である程度入手しておくようにしましょう。

・デザインの目的と用途(目的に対する現在の状況と目標も確認すること)
・デザインのイメージ
・ターゲット顧客
・納期
・予算
・会社情報、業界・競合他社 など

(2) 本番

ヒアリングは対面、または電話会議など、口頭で行われます。
文字のやり取りだけではわからなかった微妙なニュアンス、顧客の想いなどを把握できる機会になりますので有効に活用しましょう。
とは言っても、ヒアリング本番で新しいことを聞くのではなく、事前準備で入手した情報を具体的に掘り下げていく、のが基本的な方針となります。

この時、1点注意することがあります。
それはデザイナーからの質問に対し、クライアントの回答が曖昧になりがちと言うことです。

これはクライアントがあえて曖昧に回答しているのではなく、自分の中で答えがまとまっていない、聞かれたことに答えねばならないと言う焦りからとりあえず回答してしまう、などが原因です。

そのため、グラフィックデザイナーはクライアントの発言を具体的なものに落とし込んでいくお手伝いをしていく必要があります。
以下のような質問が具体化する際の役に立ちますので、ぜひ覚えておいてください。

・具体的には?
・例えば?
・○○との違いは何?
・詳しく教えていただけますか?

ヒアリング本番の会話内容で製作方針が決定することがほとんどですので、クライアントと認識合わせをしながら、良いヒアリングを目指してください。

ちなみに長時間のヒアリングが不安だという方はボイスレコーダーなどを利用し、録音/録画するようにしてください。
なお、無用なトラブルを避けるため、事前にクライアントに録音/録画の許可を取っておくことを忘れないようにしてくださいね。

(3) 事後フォロー

ヒアリングが終わった後は議事禄をクライアントと共有し、認識のズレがないことを確認しましょう。

ヒアリングの内容を一言一句正確に書き表す必要はなく、メモで構いません。
むしろ、長くなりすぎると読んでもらえなくなるため、適度に要点のみをまとめる必要があります。
制作物のコンセプト、スケジュールや納期など、製作を進めるにあたっての前提となる情報を漏れなく記載しましょう。

議事録作成に不慣れな内は時間がかかってしまいますが、この一手間を加えることにより、製作途中での水掛け論(言った、言わない)などのトラブルのリスクを下げることができ、安心して製作を進めることができます。

なお、録音/録画したデータをクライアントに送ることも考えられますが、必ず議事録とセットで送りましょう。
録音/録画データを最初から最後まで見てもらえる可能性は低いため、単独で送るのはオススメできません。

まとめ

稼げるデザイナーはヒアリング上手ということでヒアリングの心構えと手順/ポイントについて解説してみました。
当初の依頼内容をそのまま製作するのではなく、クライアントの隠れた要望を引き出せる、稼げるグラフィックデザイナーを目指してください。

ヒアリングに向けての心構え
(1) 前提を疑う
(2) 慌てない
(3) わかったつもりのまま進めない

ヒアリングの手順とポイント
(1) 事前準備:事前に把握できる情報を集めておくこと
(2) 本番:クライアントの発言を具体的にすること
(3) 事後フォロー:議事録をクライアントと共有すること

The following two tabs change content below.

奈良 みつのり

1984年生まれ。自社の魅力をうまく伝えられない企業向けに販売サイトや販促物の執筆・添削など、集客や売上アップの支援を行う。『景品表示法・薬機法などの規制を守りながら、売れる文章を生み出す』ことが得意。