
はじめに
チラシは反応率が命だと言われていますね。
チラシからお問い合わせがあると本当に嬉しいですし、お申込みや商品の購入があればさらに自信がつきます。
チラシはデザインやコピーももちろん大切ですが、同じくらい重要なのが配布する方法です。
「捨てられる」ことが前提となっているチラシの世界では、誰にどう配るかが、お客様からの反応への鍵となります。
広告代理店が制作してもお手上げだったチラシ
私が制作したチラシの中で、反応の良かったチラシがありました。
子供専門の料理教室の協会(一般社団法人)からのご依頼で制作した、無料セミナーのチラシです。セミナーの内容は、「親子でキッチンに立つ素晴らしさを伝える」というものでしたが、奈良市内で1000枚配布し、チラシから8件ものお申込みが入りました。
実はこの案件、初めは広告代理店さんがセミナーチラシを担当していたのですが、チラシからの反応が全く無かったそうで、代表の方から「試しに一度作ってみてくれませんか?」と、割と気軽に依頼されたものでした。
まず、私が思ったのは「無料セミナーなのに、なぜ?」ということです。広告を作っている私たちから見れば、無料の裏にバックエンド商品が控えているのはよく分かることなのですが、一般の方にはなかなか読み取りにくいところ。
気軽に参加してもらえそうなコンテンツではあります。もちろん、webからのお申込みはたくさんあったので、コンテンツとしては十分成立しているのです。チラシを配布する場所も、住宅地やマンションなど、ポイントを押さえて配布しています。
なのになぜ全く反応がなかったのでしょうか?
広告代理店が制作しても反応がなかった理由
私なりに、反応がなかった理由を考えてみました。
抽象的な反復語の多用
代理店さんが制作されたチラシを見た印象は、「ぐんぐん」「どんどん」などがたくさん使われていて、「う〜〜ん、今どきこのワードに食いつく人いるかな?」と、セールスコピーに精通していない私でも思うくらいでした。
子供の教育関連ではよく使われる言葉なので悪くはないのですが、あまり多用しては印象がぼやけてしまい、肝心の「セミナーに参加するメリット」が見えにくくなります。
代表の情熱がチラシに表現できていない
子育てしている女性起業家の、ご自身の事業に対する熱意というのはものすごいものがあります。ましてや法人化しているとなれば、その情熱たるや計り知れません。
熱意や情熱の全てを出す必要はありませんが、ある程度はチラシの中で表現しないと、手に取った人に共感してもらうことはできません。
チラシの構成にも「ストーリー」が必要
私は、チラシはただ情報やご案内を載せるだけでなく、「ストーリー」を載せる必要があるという考えのもと、制作しています。セミナーチラシの場合、「なぜこのセミナーを開くのか」「どんな人にセミナーに参加してもらいたいか」などを明確にしなければなりません。また、「参加した人がセミナー後にどうなって欲しいか」を考えることも大切です。
私は今回のチラシではこのように表現しました。
(表面)
セミナーのタイトル、日程など情報を大きく
↓
お客様が抱えている問題(「親子でお料理するとついイライラしますよね?」)
↓
主催者の紹介(「なぜ、私がこども料理教室を始めたのか」)
(裏面)
こどもがお料理することによるメリット
↓
お客様の声(「すぐに子供とお料理したくなりました!」)
↓
お問い合わせ、申込み、日程、会場、地図など詳細情報
現物を見ていただけないのが残念ですが、一連の流れを見ていただければ分かるように、ストーリー性のある展開にしています。また、出来るだけ共感してもらいやすく、表を見て興味を持ったら裏も見たくなるような構成を考えました。
しかしどんなに頑張っていいチラシを作っても、まだまだ反応は得られません。
勝負はこれからなのです。
制作者自らポスティングしてみる
チラシの制作者は、一度は自分の制作物を自分の足でポスティングをすることをおすすめします。100部でも構いません。
これは、あえて苦労しろ!とかいう意味ではなく、マーケティングの一環としてあちこち回ってみるのも勉強になるということです。特に、自分の制作したチラシならば、投函した時の見せ方を工夫でき、またチラシの良い面悪い面がよく分かり、後の制作物で活かすことができます。
ポスティングのコツ
・ポスティングする地域を絞る
配布するチラシの内容で配布する地域を絞ります。子育てや子供の習い事関連のチラシならば、家の周りに子供の自転車や遊び道具が置いてある家に配布します。また、幼稚園や保育園、学校の近くにある住宅地などにも子供がたくさんいそうですね。また、ざっくりとしたデータにはなりますが、対象地域の自治体が発表している人口統計などを調べてみるのも有効です。
・マンションなどのポスティング
多世帯マンションは一気にポスティング出来て効率的ですが、オートロックや管理人がいるマンションには、ポスティングしにくいものです。管理人に言えばOKが出る場合もありますが、明らかに「チラシ投函禁止」と表示されているマンションには、基本的に投函を控えた方がいいでしょう(基本的には)。
・「投函禁止」のマンションに投函したい場合
どうしても投函禁止のマンションに入れたい場合は、郵便局のDMサービス
「タウンプラス」を利用するのも一つの方法です。郵便局に行って配布する地域を指定し、印刷物を持ち込みます。この場合はチラシでなく、ハガキタイプで制作する必要がありますが、一度配布地域の郵便局に相談してみてもいいですね。
〈郵便局DMファクトリー〉
https://dmfactory.biz.post.japanpost.jp/townplus/
・ポスティングする時のチラシの入れ方
チラシの入れ方について私の周りで議論になったのですが、「ぴっしり折って入れる派」と「ふんわり折って入れる派」に分かれました。
はっきり言ってどちらでもいいのですが、住人の方がポストに投函された郵便物やチラシを取る時、どちらが目立って手に取ってもらいやすいかを考えます。
私の場合は、ポストの詰まり具合で判断していて、ポストに余裕がある場合は「ふんわり折り」、ギチギチの場合は「ぴっしり折り」で投函しています。また、投函するチラシの向きも大切です。
実際にポスティングに奈良まで行ってみた
梅雨入りしたての蒸し暑い日に、奈良市内にポスティングに行きました。
奈良市内は、高層マンションの横に昔ながらの家が混在していると言った街並みでした。
まず新しめのマンションを探します。ポスティング出来そうかどうかを確認して、ささっと投函します(ふんわり折り推奨)。
次のマンションへの移動の間にも、新築の戸建てや子供がいそうなマンションがないかをキョロキョロ探しながら歩きます。2名でポスティングしたのですが、3時間ほどで配り終わりました。「ぜひセミナーに来てください!」と願いを込めながら投函したのをよく覚えています。
1000枚配布して8件の申込みという「結果」
最終的にこの無料セミナーの申込みは16名で、うち8名がチラシからのお申し込みでした。
セミナーは盛況だったとのことです。この次(バックエンド)に繋がったかどうかは定かではありませんが、集客に貢献できたということと、チラシをプロデュースして結果が出たということで、私にとっても大きな自信になりました。
まとめ
自分がプロデュースしたチラシがどのように配布され、反応を追うことは、マーケティングの観点からも有効です。
自らの足でポスティングして、対象地域の雰囲気を知ることや、チラシの投函方法を工夫することも、マーケティングに強いグラフィックデザイナーの大切な経験の一つなのではないでしょうか。