
はじめに
セールスコピーライターやグラフィックデザイナーなど、広告制作に携わる人が一番に考えること。
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それはクライアントの商品・サービスの特徴を、消費者に魅力が伝わるようにすることです。
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いかに消費者に欲しいと思ってもらえるか、買ってもらえるか、ということを日夜考えるのが、広告制作者です。
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もちろん、それは広告を制作するうえで、とても大事なことなんですが、1つ忘れてはいけないことがあります。
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それが法律を守ること。広告制作者にとって、特に広告を制作するうえで避けては通れないのが景品表示法(景表法)です。
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この景品表示法のことを忘れ、ただ「売れる広告」だけを作ろうとすると、後から話すように痛い目に合ってしまいます。
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景品表示法は、セールスコピーライターやグラフィックデザイナーが避けては通れない壁です。
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ただ、法律的な話は、難しい。よくわからない・・・そう思っている方も多いのではないのでしょうか。
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そこで、今回は景品表示法上NGとなる違反事例をいくつか紹介しながら、わかりやすく解説していきたいと思います。
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広告制作に関わる人は知らないでは済まない話なので、ぜひしっかり読んでください。
【簡単に解説】そもそも景品表示法(景表法)とは?
まずは、景品表示法(景表法)について簡単に解説したいと思います。
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景品表示法、もしくは景表法と一般的に言われているものは、正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法」(昭和37年法律第134号)と言われます。
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景品表示法の第一条に書かれている目的をそのまま抜粋すると、次のようなことが書かれています。
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商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを目的とする。
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一言で言うと、景品表示法とは不当な表示によって、消費者を誤認させるようなことを禁止する法律というわけです。
景品表示法の改正~課徴金制度&事業者名の公表~
この景品表示法ですが、数年前から話題になり、にぎわうことが多くなりました。
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それはなぜかというと、2016年4月に、景品表示法改正法が施行され、課徴金制度というものが適用されるようになったからです。
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課徴金制度とは、不当な表示をした事業者に、売上の3%の課徴金を課す制度です。
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改正されたのは、この課徴金制度だけではありません。
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この課徴金制度と併せ、さらに事業者名が消費者庁のwebサイトなどで公表されるようになっています。
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つまり、景品表示法に違反した事業者は、社会的信用を失うリスクが出てきました。
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どちらかというと、売上の3%程度の課徴金より、こちらのインパクトのほうが大きいかもしれません。
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事業者のブランドイメージが損なわれ、中小企業であれば、倒産の危機に陥る可能性があります。
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課徴金制度と、事業者名の公表が適用されたことで、当然事業者は、今まで以上に景品表示法を意識するようになりました。
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ということは、セールスコピーライターやグラフィックデザイナーなどの広告制作者も、当然景品表示法を強く意識する必要があるわけです。
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広告制作者は、マーケティングに対する理解だけではなく、景品表示法などの法律も理解しないといけなくなったのです。
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では、景品表示法の「不当な表示」とは、具体的にどのようなものを指すのでしょうか?
優良誤認表示と有利誤認表示
景品表示法(景表法)は、大きく優良誤認表示と有利誤認表示というものに分けることができます。
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まず、優良誤認表示とは、商品・サービスが、実際のものよりも「とても良い!」と思わせてしまうことです。
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私は以前セールスコピーライティングを学んでいた際、「コピーライターの仕事は、商品・サービスの価値が100なら、100で伝えること」と言われたことがあります。
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100を80や90で伝えてしまうということは、商品・サービスの価値を充分伝えられていないということです。
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100を110や120で伝えてしまうとうことは、実際のサービスよりも過剰に「とても良い」と思わせてしまうことです。
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この100を110や120で伝えてしまうというのが、優良誤認表示と思って良いと思います。
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一方、有利誤認表示とは、価格などの取引条件について、実際よりもお買い得と思わせてしまうことです。
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つまり、商品・サービスについてPRするときは、実際のものよりも「素晴らしい!」「なんてお買い得なの!」と思わせてはいけないということになります。
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ここまでで、景品表示法の概要はだいたいつかむことができたと思うので、早速違反事例についてお伝えしていきましょう。
【景品表示法違反事例1】アディーレ法律事務所の場合(有利誤認)
景品表示法違反で比較的有名な事例でいうと、2016年に2ヶ月間の業務停止処分となってしまったアディーレ法律事務所があります。
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アディーレ法律事務所というと、過払い金返還・債務整理などのCMでよく見かける、大手の弁護士事務所です。
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大手の弁護士事務所が法律違反というインパクトもあり、業務停止命令を食らったことは記憶にある方も多いのではないでしょうか?
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それでは、実際に、アディーレ法律事務所は、どういう景品表示法違反を犯したのでしょうか。
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当時、アディーレ法律事務所は、ホームページに「過払い金返還請求の着手金を○月○日から1カ月間、無料にする」というキャンペーンをやっていました。
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これだけなら、特に問題なさそうですよね。期間限定のキャンペーンなんて、どこでもやっていると思います。
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それでは何がまずかったのでしょうか。
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じつは、アディーレ事務所は「1ヶ月間」という表記にも関わらず、同じサービスで、同じキャンペーンを5年もの間行っていたのです。
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それが景品表示法の「不当な表示」に当たるとされ、2ヶ月間の業務停止命令処分となりました。
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アディーレ法律事務所の事例は、実際のものよりも「なんてお得なの!」と思わせてしまう有利誤認にあたります。
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ここでポイントになるのが、同じサービスで、同じキャンペーンということ。
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例えばアディーレ法律事務所であれば、過払い金返還請求の着手金のキャンペーンが終わった翌月に離婚問題や労働問題など、別の案件でキャンペーンをやれば問題ありません。
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また、同じ過払い金請求でも、翌月以降は有料だが着手金50%OFFにすれば問題なかったでしょう。
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このように、期間限定と見せて、ずっとキャンペーンとして打ち出している事例は他にもあります。
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最近では大阪のイオンモールが、「その日限り」と打ち出していた商品が、実は毎日同じ価格で売っていたということがありました。
【景品表示法違反事例2】二重価格表示(有利誤認)
景品表示法違反のうち、有利誤認にあたる事例として代表的なものに二重価格表記があります。
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二重価格表示とは、商品を販売する際、その商品が低下より大幅に安価であることを強調し、消費者の購買意欲を刺激するような表示です。
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つまり、「19,800円⇒9,800円」のような表示です。チラシやランディングページなどでよく見かけますね。
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この二重価格表示そのものは、景品表示法では特段違反にはなりません。
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ただ、割り引く前の値段、つまり「19,800円⇒9,800円」と表示しているならば、19,800円での販売実績があるかどうか。
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もし、19,800円で販売実績がまったくなく、しかも将来的にこの価格で売るつもりがない場合は景品表示法違反にあたります。
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二重価格表示は非常によく使われる表示です。
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セールスコピーライターやグラフィックデザイナーで、二重価格表示した商品を扱ったことがない人なんて、ほぼ皆無でしょう。
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しかし、この二重価格表示にも、景品表示法違反という罠が隠されているのです。
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それでは、二重価格表示で、どれがNGでどれがOKか、という事例を出していきたいと思います。
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【事例1】
「本来は5,000円のサービスだが、開業記念キャンペーンで、今回は2,000円で実施する」と言った場合はどうでしょうか。
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これは本当に将来に5,000円でサービスを行うことであればOKになります。
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このように、将来の値上げを示唆して二重価格表示を行う場合は、将来の販売価格に充分な根拠があればOKです。
【事例2】
「5,000円で売ったことがないけど、2,000円のものを売る」
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過去の販売実績もなく、将来的にも5,000円で売る予定がなければNGになります。
【事例3】
「過去に5,000円で販売していたものを、2,000円で販売して2週間以上経過している」
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過去の販売実績があるので、OKと言いたいところですが、これはNGに当たります。
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景品表示法では、実際に割引前の価格で販売していた日から2週間以上経過したら、二重価格表示はできなくなります。
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このように、単純に過去の販売実績があれば景品表示法でOKとなるわけではありません。
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じつは比較対照価格として過去の販売価格を使う場合は、景品表示法では細かいルールがあります。
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二重価格でOKとなる場合をまとめると、意外と複雑な条件になっていることがわかります。
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・過去8週間のうち、4週間以上は元の価格で販売されている。
・上記「事例3」のように、実際に元の価格で販売して2週間未満。
・販売開始から8週間未満の場合は、販売期間の過半かつ2週間以上の元の価格での販売実績がある。
・販売期間が2週間以上であること。
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よって、過去の販売価格を使って二重価格表示をする場合は、上記の例に当てはまるかどうか確認することが必要です。
【景品表示法違反事例3】ダイエット食品の場合(優良誤認)
年々厳しくなっている薬機法にも絡んでくるダイエット食品ですが、景品表示法の観点からも考えないといけません。
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ダイエット食品で、よく出てくる謳い文句としては、次のようなものが挙げられます。
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・たったの1ヶ月で7kg痩せることができました!
・ただこのサプリメントを飲むだけで痩せられました!
・お腹と太ももがこんなにほっそり!
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これらの表示も、たとえ実際にお客様の声などで得られた情報であっても、明確な根拠がなければ景品表示法では優良誤認とされます。
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では、どういったものが明確な根拠になるかというと・・・
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(1)資料が客観的に実証されたものであること。つまり、専門家の見解や学術文献、試験・調査などで実証されていること。
(2)表示された効果・性能と資料によって実証された内容が適切に対応していること
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この2点のいずれかを満たしていなければいけません。
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なお、先に書いたようにサプリメントなどの健康食品や化粧品は、薬機法や健康増進法の観点からも注意が必要になります。
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美容・健康業界がSEO対策で厳しくなっているのは有名な話ですが、法律的にもどんどん厳しくなっています。
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美容・健康業界では、これらの法律を遵守したうえで、ベネフィットを表現することが求められています。
【景品表示法違反事例4】学習塾の場合(優良誤認)
とある学習塾のチラシであった景品表示法違反(優良誤認)の事例です。
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「国公立大出身98% 精鋭講師陣が皆さんを指導」
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このようなキャッチコピーだったのですが、何が問題だったのでしょうか。
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そのチラシですが、きちんと講師の方の写真のキャプションに、卒業した国公立大学が明記されていました。
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ところが、実際は、この学習塾の講師の国公立大学・大学院出身者は、なんと14%しかいなかったのです。
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これは優良誤認としては、かなりわかりやすい例です。
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このように割合について虚偽の数値を載せてしまうと、優良誤認として、景品表示法違反になってしまう可能性が高いです。
【景品表示法違反事例5】松阪牛のしゃぶしゃぶ・すきやきの場合(優良誤認)
もう1つ、実際にあった事例を出すと、次のような表示がされている広告がありました。
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・松阪牛入荷しました
・松阪牛しゃぶしゃぶコース7,000円
・松阪牛すきやきコース7,500円
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しかし、実際には松阪牛はほとんど使用しておらず、大部分は松阪牛以外の和牛が使用されていたという景品表示法違反事例です。
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食品で似たような事例は結構多く、例えば過去にこんな事例がありました。
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・車海老と称して、じつはブラックタイガーを使っていた
・100%グレープフルーツジュースだが、じつは果汁100%ではなかった
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このように、材料を偽って表示してしまうのは、典型的な景品表示法違反事例です。
【景品表示法違反事例6】満足度○○%(優良誤認)
よく見かける「満足度○○%」「受講生の○○%が月収○○万円達成」「受講生の○○%が効果があったと回答」のような文言。
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これも明確な根拠を記載していないと、景品表示法違反になってしまいます。
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この例については、後述する打ち消し表示などを用いて、簡潔に根拠を示す必要があります。
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例えば、満足度98%であれば、「顧客アンケートの調査結果」などと記載するなどが必要になってきます。
【景品表示法違反事例7】打ち消し表示(優良誤認、有利誤認)
景品表示法で必ず抑えておきたいポイントの1つが、打ち消し表示です。
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打ち消し表示とは、商品を販売する際の品質や価格といった訴求点を大きな文字で目立たせた表示(強調表示)の例外を示したものです。
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代表的な打ち消し表示について、いくつか例を出していくと・・・
打ち消し表示の代表的な7つの例
打ち消し表示には、代表的に、次の7つの例があります。
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打ち消し表示は小さく表示されており、普段意識して見ることはないかもしれません。
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しかし、言われてみれば「あー、あれね」と思えるようなものばかりなのがわかると思います。
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【例外型】
強調表示・・・駐車場料金1時間100円!
打ち消し表示・・・○○期間は除く
【体験型】
お客様の声なんかの横に、「※個人の感想であり、効果には個人差があります」と書かれているようなものです。
【別条件型】
強調表示・・・インターネット契約、月額2,980円
打ち消し表示・・・別途、○○オプションが必要です。
【非保証型】
強調表示・・・「1ヶ月で5kg痩せた!」「9時間効果が持続!」
打ち消し表示・・・「効果には個人差があります」
【変化可能型】
価格が書かれたところの横に、小さく「価格・内容は予告なく変更する可能性があります」などと書かれている表示です。
【追加料金型】
強調表示・・・「月額○○円」
打ち消し表示・・・「別途初期費用○○円がかかります」
【試験条件型】
強調表示・・・高速通信を実現!!
打ち消し表示・・・○○規格に対応している場合です
「個人の感想です。効果には個人差があります」と書くのはだめ??
打ち消し表示のなかで、一番気を付けたいのは体験型と呼ばれる、あの「個人の感想です」というもの。
じつは、この「個人の感想です」が許された時代は終わったと言われています。
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というのも消費者庁が、実態調査報告書において、「個人の感想です」と書かれたものは、「景品表示法ではNG」とはっきり見解を示したからです。
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では、どうすればOKかというと、
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(1)被験者の数と、その属性
(2)(1)のうち、体験談と同じような効果、性能等が得られたものが占める割合
(3)(1)のうち、体験談と同じような効果、性能等が得られなかった者が占める割合
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これをはっきりと明示することが求められています。
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例えば「2ヶ月で2kg痩せました」という体験談で、打ち消し表示を書く場合は、
※平均BMI27の成人男女60名を摂取群と対象群にわけ、2ヶ月間の比較試験を実施。うち、2kg以上痩せた人の割合は63%、2kg未満の人は37%(2018年○○調べ)
と記載する必要があるのです。
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もちろん、63%なんて微妙な数字です。統計的には、95%前後の信頼区間を書いたほうが良いためです。
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この例で、「3ヶ月で2kg減」なら95%前後にできるなら、そのような体験談を採用するのが良いでしょう。
打ち消し表示の注意点
打ち消し表示は、景品表示法を遵守するのであれば、ある程度目立つように表示する必要があります。特にグラフィックデザイナーは注意したいところです。
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紙媒体(チラシ、リーフレット等)とweb媒体(ホームページ、ランディングページ等)に限っても、これだけのことを守らないといけません。
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・打ち消し表示の文字の大きさは8ポイント以上とすること
・強調表示と打ち消し表示の文字の大きさのバランス、配置箇所が適切であること
・打ち消し表示と背景を区別すること
・強調表示と打ち消し表示の距離が1スクロール以内であること
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特に打ち消し表示で注意しないといけないのはスマホ表示です。
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これについても、消費庁が実態調査報告書を出しています。
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・アコーディオンパネルにおける打ち消し表示は、当該部位に重要な情報があることがわかるようにすること
・操作なしで打ち消し表示が見えるように表示すること。
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など、パソコン以上に強調表示と打ち消し表示のバランスが求められています。
【まとめ】景品表示法を守るために重要なポイント
セールスコピーライターもグラフィックデザイナーも、景品表示法などの法律を理解しておくことが必要です。
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もはやマーケティングの理解だけでは済まされない時代になっています。
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・表示する内容が事実に基づいたもので、客観的な根拠があるかを確認する
・過去に景品表示法違反となった事例を把握し、同じ表現になっていないかを確認する
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今回は景品表示法の違反事例を中心に書いています。
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これらを把握するだけでも、景品表示法的にNGにならないような書き方ができると思います。
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セールスコピーライターでも、グラフィックデザイナーでも、景品表示法等の法律に強い人は、まだまだ少ないのが現状です。
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法律に強くなるだけで大きな強みとなり、クライアントから、より頼りにされたり、高単価の案件が舞い込んだりすると思います。