はじめに
その人にしか表現できない唯一無二の世界観。
それはとても魅力的でかっこいいものです。そしてその世界観が強ければ強いほど、そこに共鳴する人は限られてきます。
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さて、それを踏まえて、グラフィックデザイナーにとって、「ああ、このデザイン、◯◯さん(某有名デザイナーさん)が手がけたものですよね!見たらすぐわかる!」「あー、このチラシ、◯◯さん(某有名デザイナーさん)らしい!」と言われることは、果たしていいことなのか?それとも悪いことなのか?考えていきたいと思います。
独りよがりのデザインになっていませんか?
グラフィックデザイナーの多くはデザインをすることが大好きでこの職についていると思います。デザインを通じて、独自の世界観を表現できることに仕事の醍醐味を感じている方も多いかもしれません。
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しかし本来の目的を無視して自分の世界観を打ち出してしまうと、それはただのエゴになってしまいます。
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それがどんなにデザイン性に優れた素晴らしいものだったとしても、クライアント様が求める結果が得られなければ、ビジネスとして成立しません。
重要なのは商材の世界観と一致しているかどうか
例えば、個人的にすごく気に入っている可愛らしいパステル系のピンク色があるとします。そして、自分の制作物には是非その色を使いたい!と思っていたとします。
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では、その時たまたま回ってきた案件の男性向けのお堅いビジネスセミナーのテーマカラーとしてその色を持ってきたら、そのセミナーの印象はどんなものになるでしょうか?クライアント様やそのセミナーに来られるターゲットの方達は違和感を感じるのではないでしょうか?
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また、もしイタリアンレストランのチラシを赤と白と青をメインカラーに使って作成したらどうでしょう?
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赤・白・青といえばフランスの国旗の色ですよね。どんなにオシャレで目を引くチラシだったとしても、発注したイタリアンレストランのオーナーさんは違和感を覚えるでしょう。自分のサービスがなんなのかわかっているのか?と不安に感じ、良い印象は持ってもらえないことが予想されます。またそのチラシを受け取る方達も、違和感を持ったり、フレンチのお店だと勘違いしたり、してしまうかもしれません。
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ここまでのズレはなかなかないにせよ、商材の世界観や目的から大きく外れてしまっているデザインの制作物は意外に多いものです。
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「グラフィックデザイナーの好み」=「ターゲットの世界観」にはならないということを常に念頭に置いておかないと、知らず識らずのうちに、本来表現すべき世界観から離れていってしまいます。
本当にあった不幸なデザインの話
今度は実際に起きてしまった事例を2つ紹介いたします。
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誰も得しなかった、ある産婦人科のお話
郊外のとある産婦人科病院では、病院からのお知らせや病院で出産した方の現在の活躍を伝えたりする季刊誌を発行していました。
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これを男性メインのデザイン会社に発注したところ、文字がびっしりと詰まった冊子が納品されてきました。
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女性ならわかると思うのですが、女性は教科書のような文字だらけのものをあまり好みません。一般的なセオリーとして、女性は文字よりイメージから情報を受け取るのが得意なので、写真をたくさん載せて文字はなるべく少ない方が好まれます。
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この病院は産婦人科ですから読者はほぼ女性。
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さらに発注した院長先生も女性だったので、「こんなに字がたくさんのものは読みたくならないし、好みでない」と訴えたそうです。でもこのデザイナーさんは、「自分はこれがいいと思う」と言って受け入れませんでした。
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その後もイベントのチラシやホームページなど幾つかの案件を同じデザイン会社に頼んだそうですが、要望をどんなにつたえても、相変わらず男性的なイメージの制作物ばかりが納品され、最終的に「こんなもの使えるわけがない」、と院長先生は制作物を突き返してしまったそうです。
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このようにターゲットの頭の中を一切想像しないで作ってしまうと、クライアントのニーズも汲まれていない、その先のターゲットの世界観からもずれている、だれも幸せにできない制作物になってしまいます。
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発注元の方は満足できるものを手に入れていないのに、お金だけ持って行かれてしまうという最悪の結果です。
こだわりの強すぎるデザイナーの末路
とあるデザイン会社の男性デザイナーさんは「俺はこの書体が絶対いいと思う」「俺はこのホワイトスペースの取り方が一番だと思う」「俺はこの空間取りが最高だと思う!」と、俺の持論を常に言って曲げない方で、いつも依頼をくれる大手出版社ともめることが多かったそうです。
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結局何度、打ち合わせをしても、このデザイナーは出版社側の意見を受け入れず、自分の意思を押し通したため、結局担当を変えられてしまい大きなクライアントを失うことになりました。
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プロ意識を高く持ち、時にはクライアント様に自分の考えを提案することはとても素晴らしいことです。しかし、商材のことを最も深く理解しているのはクライアント様であることを忘れてはいけません。
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あまりにも自分の意見を押し通すと、クライアント様を失ってしまうことにもなりかねません。
グラフィックデザイナーはアーティストではない
2つの事例のデザイナーさんの最も良くない点のひとつは、自分の表現したいデザインを最優先してしまったことです。
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そもそもグラフィックデザインとはビジネスにまつわるデザイン、「商業デザイン」です。
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同じくデザインをする仕事ですが、画家や陶芸家など自分が表現したい世界観が売り物のアーティストの作品とは目的が全く異なります。グラフィックデザイナーの生み出すデザインはビジネスが成功しなければ意味がないのです。
顧客のニーズに応えるためにおさえるべき3つのポイント
とはいえ、やはり人が作るものなので、人間味やエゴは出てしまいがちです。では実例のような結果にならないために、何に気をつければ良いのか?3つのポイントを考えてみました。
マーケットが受け入れるのか確認を怠らないこと
商業デザインの一番の目的はターゲットの方に商材を買ってもらうことなので、何よりも最優先すべきはマーケットの気持ちです。
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商材を買ってほしいターゲットはどんな色を好み、どんあデザインならその商材が欲しいと思うのか?常にここを意識してマーケットに響くような色、デザインにすることが売り上げへの貢献につながり、ひいてはクライアント様にも利益をもたらすことができます。
客観的視点を常にもつこと
制作物の作成に没頭していくと、ついつい目的を忘れてしまったり、デザインが暴走してしまったりすることがあります。
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このフォントがアツい!とか、この書体が最高!とか、この色がきれいだから使いたい!とか、ふと思いついたとしても、すぐにデザインに落とし込んでしまうのではなく、暴走している自分を客観的に見られる冷静な視点を常に持てるようにしておくと、マーケットが求めていないものになることを避けられるので安心です。
第3者の意見を受け入れる器を持つこと
人が作る以上、人間味をゼロにするということは不可能に近いです。
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マーケットを意識して、客観的に見たとしても、無意識にやってしまっていることも多いため、自分では気づけないことも多々あると思います。そんな時はクライアントや同僚など、第3者に見てもらうことをお勧めします。
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可能であればエンドユーザーに診てもらうのもいいかもしれません。自分以外の誰かに見てもらうことで思わぬ落とし穴を発見できるかもしれません。
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「いまいちだね」「なんか変だな」と言われてしまうかもしれない・・・そんな不安がよぎるかもしれませんが、ビジネスを成功させ自分の実績を上げるためにも是非、勇気を出して誰かに聞いてみましょう!
まとめ
グラフィックデザイナーの仕事はアートではなく商業デザインなので、デザイナーの個性や世界観を打ち出すことよりも、売り上げアップなどビジネスを成功に導くことが最優先です。
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しかし、人間の手で作る以上、エゴや人間味が出てしまうのは仕方がないことなので、
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1)マーケットが受け入れるのか確認を怠らない
2)客観的視点を常にもつ
3)第三者の意見を受け入れる器をもつ
[br num=”1″] この3点を意識しながら作業を進めていくことをお勧めいたします。[br num=”1″]