はじめに
グラフィックデザイナーは、専門分野の職種として、高い知識やスキルが必要であると思われがちです。
しかし、グラフィックデザイナーは特定の資格や免許がないとできないわけではありません。
資格や免許がなくても「私はグラフィックデザイナーです」と名乗ることもできますし、企業に就職することも可能です。
ただし、デザインの分野に関連性のある資格も多数存在します。資格取得や検定を受験することで、実際の現場で活かすことができ、就職試験の際に面接官に「やる気」の1つとして見せる事が可能です。そのためデザイン系の専門学校では資格取得を進めているところもあります。
また、自分のレベルがどの程度なのか、ということを把握するための基準の1つとして、資格に挑戦するのは、とてもおすすめです。
この記事ではグラフィックデザイナーが取得しておくと就職に有利、あるいは受験勉強をする上で将来有益になる資格・検定6選をご紹介していきます。
グラフィックデザイナーが持っていると有利な資格
グラフィックデザイナーが使うデザインソフトの代表は、アドビ社が提供しているillustratorとphotoshop, In Designの3つです。
そのため、illustratorやPhotoshopなどの能力のレベルを1つの基準として測ることができる資格がおすすめです。
1.アドビ認定エキスパート(ACE)
アドビシステムズより委託を受けているピアソンVUE社が実施。 デザインソフトillustrator, Photoshopを含めた、アドビ社のソフトウェア製品についての専門的な知識と技能を持っていることを証明できる資格です。
アドビ認定エキスパート(ACE)は、Adobe Acrobat / Adobe After Effects / Adobe Dreamweaver / Adobe Illustrator / Adobe InDesign / Adobe Photoshop の製品の中から、選択した単一の製品についての専門知識の保有者であることを証明します。 実技試験はなく、会場にあるコンピューターで試験が行われます。各ソフトウェア製品に沿った課題が課されます。 製品によりますが、およそ60問から90問ほど出題され、終了後すぐに合否判定が出ます。
いずれかの試験に1科目以上合格し、ACE(アドビ認定エキスパート)許諾書に同意することで取得が可能です。 将来、グラフィックデザイナー、DTP関連企業、Webデザイナー、パソコンのインストラクターなどになりたいという目標があれば就職にも有利に働く可能性があります。
またACEの他、スペシャリスト認定としてプリントスペシャリスト、Webスペシャリスト、ビデオスペシャリストなど様々な分野に応じた高度な専門知識を必要とする試験もあります。
アドビ認定エキスパート(ACE)合格基準
・Adobe Illustrator CS4 64%以上の得点率で合格
・Adobe Photoshop CS4 70%以上の得点率で合格
・Adobe InDesign CS4 69%以上の得点率で合格
2.Photoshopクリエイター能力認定試験
ビジネスで使うソフトウェア系の試験を多く主催しているサーティファイソフトウェア活用能力認定委員会が主催。
デザインや印刷業界において標準となるアドビ社のPhotoshopを駆使して、掲示されたテーマから仕様に従ってコンテンるを制作する能力を測定する試験です。
認定基準には、エキスパートとスタンダードがあります。
エキスパートは『Photoshopを活用し、クライアントのニーズに対応した創造性の高いコンテンツ制作ができること』を目指します。
スタンダードは『Photoshopを活用し、指示通りの作業を正確かつ合理的に行う事ができる』ことを目指します。
スタンダードには実技問題と実践問題があります。エキスパートにはそれにプラスして知識問題があります。
スタンダードで出題される内容に加え、スライスツールの使用やレイヤーの応用、DTPからWEBデザインまでの幅広い知識、カラーマネジメントといった、高度で専門的な知識を問われる事が特徴です。
受験資格:学歴・年齢等に制限なし
合格基準
エキスパート:知識問題・実技問題の得点率65%以上で、かつ実践問題の得点率70%以上で合格
スタンダード:実技問題の得点率65%以上、かつ実践問題の得点率70%以上で合格
(合格率 72.0% H28)
3.Illustratorクリエイター能力認定試験
Photoshopクリエイター能力認定試験と同じくサーティファイソフトウェア活用能力認定委員会が主催する試験。
ドキュメントデザイン技術に関する知識を有し、illustratorを駆使して掲示されたテーマ・素材から仕様に従ってコンテンツを制作する能力を認定、証明できる試験です。
認定基準には、エキスパートとスタンダードがあります。
エキスパートは『Illustratorを活用し、クライアントのニーズに対応した創造性の高いコンテンツ制作ができること』を目指します。
スタンダードは『Illustratorを活用し、指示通りの作業を正確かつ合理的に行う事ができる』ことを目指します。
スタンダードには実技問題と実践問題があり、エキスパートにはそれにプラスして知識問題があります。Photoshopクリエイター認定試験と同じく、エキスパートではより高度で専門的な知識を問われる事が特徴です。
受験資格:学歴・年齢等に制限なし
合格基準
エキスパート:知識問題・実技問題の得点率65%以上で、かつ実践問題の得点率70%以上で合格
スタンダード:実技問題の得点率65%以上、かつ実践問題の得点率70%以上で合格
(合格率 68.9% H28)
4.DTPエキスパート認定試験
DTPエキスパートは「良い印刷物」「良い制作環境」「良いコミュニケーション」により「高いパフォーマンス」を実現するための印刷メディアにおけるすアーパーバイザーと、定義されています(DTPエキスパート JAGAT公式HPより)
認定試験には、印刷基礎知識やDTP全般の知識が必要となります。
試験は2部構成となっており、学科試験と実技試験があり、どちらも試験時間は120分です。
学科試験では「DTPの概念」「色」「印刷技術」「情報システム」「コミュニケーション」のカテゴリから出題されます。
実技試験では、事前に渡される課題に沿って「作品」「制作指示書」を提出期限内に提出します。
作品は、レイアウトや文字・画像の配置やバランス・配色などが適性となっているかが問われます。
制作指示書は設計や要素・表現が適切であるかを問われます。
どちらも80%以上の得点率で合格となります。
<合格率>44.9%(第46期)
参照元: DTPエキスパート JAGAT公式HP
5.色彩検定
公益社団法人 色彩検定協会(略称 A・F・T)が実施している、色に関する幅広い知識や技能を問う検定試験です。
難易度や程度に応じて1級から3級まであり、1級と2級、2級と3級は同じ日に受験可能です。
インテリア、ファッション、グラフィックはもちろん、企業のデザイン・宣伝部門などでも活用できます。
また、色彩の講師や、アナリストなどとして直接色に関わる仕事に就く人もいます。 IT・コンピューター、ファッション・デザイン、住宅・建築関係の受験者が多いのが特徴です。
3級は独学で受験することも可能ですが、上級資格を目指すのであれば、独学だけでは難しく、対策講座や通信教育などを活用している方が多いようです。
・3級
色の働きや心理的効果、色彩調和など、主に基礎的な内容が出題されます。
試験はマークシート方式
<3級>合格率 75.3%(2016年)
・2級
3級の内容に加え、配色技法や配色演習など、より専門的な内容が出題されます。
試験はマークシート方式ですが、一部記述式があります。
<2級>合格率 62.8%(2016年)
・1級
3級・2級の内容に加え、色彩調和論やユニバーサルデザインに関する知識・表色系など、高度な専門性を問われる内容が出題されます。
1級のみ1次試験と2次試験があり、1次はマークシート方式(一部記述あり)、2次は記述式(一部実技あり)となっています。
<1級>合格率 29.8%(2016年)
また、色彩検定とよく比較される試験として、カラーコーディネータ検定があります。
色彩検定と同じく色に関しての幅広く、高度な専門性を必要とする試験です。
カラーコーディネーター検定は特にファッショ業界やインテリア業界を志望する方が多く受験しています。色彩調査・色彩計画・色彩管理などの仕事に必要な専門知識のレベルを証明することが可能です。
参照元: 色彩検定協会公式HP
6.レタリング技能検定
文部科学省後援のもと、公益財団法人国際文化カレッジが主催しています。
レタリング技能検定には、難易度や程度に応じて4級・3級・2級・1級があり、どの級からでも受検可能です。
レタリング技能検定では、文字デザインに関する正しい知識と、用途の応じた美しい文字や独自性・訴求力のある文字を書き表す能力を証明できます。
文字デザインは、ロゴタイプ、スーパーなどでよく見かける店内POP、パソコンを駆使したDTPなどに使用されるフォントなど、様々なフォントを含みます。
その数多くのフォントの中から、文章にもっともふさわしい書体を選び、文字のサイズや行間を決めていくことも文字デザインの中に含まれます。
【平成29年度】試験の合格率 ・1級4.3% ・2級 21.4% ・3級 68.2% ・4級 78.5%
参照元: レタリング技能検定公式HP
まとめ
どの資格がないとグラフィックデザイナーとして仕事ができない、というわけではありません。なので、資格はあくまでも目安にしか過ぎないということもあります。
しかし、資格・検定に合格することは自身の能力やレベルを証明する基準の1つとなります。
企業に就職する際には、実績やスキルに加えて説得力をます1つの目安となることもあるでしょう。
興味がある方は、ぜひ挑戦してみると良いでしょう。